「生と死の分岐点」という本があります。1巻,2巻と2冊出版されています。事故例から教訓を学ぶ内容で,何度も読み返した本でもあります。
これまで私がやってきた登山やクライミングで,実際にあったヒヤリハットや重大事故,目撃例も含めてまとめてみました。
① カムの脱落
これは過去に3回経験しています。すべてスモールカムやスモールナッツです。
1回目 前穂北尾根(4月)をソロで登っていたとき,懸垂下降に使ったカムが一つ吹っ飛んだ(フレンズ0番)。もう一つのカムで落下せずに済んだ。
2回目 小川山烏帽子左稜線の20ピッチ目あたり,作った支点のカムが吹っ飛んだ(フレンズ0番)。もう一つのスモールカムでセカンドの落下を止めた。
3回目 名張の香落渓5.11aのルートでグラウンドフォール。全治1週間ほどの怪我。すべてスモールカム,スモールナッツだった。
教訓 スモールカムによる最終支点は最低3個以上にする。
スモールカムやナッツのセットは,特に慎重に。
クラックにおいては「特に」,身の丈に合ったグレードを登る。
② 雪崩
(1) 冬季錫杖岳で初登ルートを登り終えて帰還するとき,私のすぐ後ろをでかい雪崩が通過して間一髪助かった。
(2) 様々な冬山で亀裂の入った雪面をバックステップで下降した。
教訓 雪崩に対する知識不足
樹林帯では雪崩が起きないという思い込み
③ 装備
ロープの切断やそれに準ずる経験はありませんが,ハーネスが破断したクライマーを見たことがあります。
十数年前のハーネスだったそうで,フォールによりタイインポイント下部が破断。タイインポイント上部のみでぶら下がる形になりました。
④ 落石
これは何度もあります。自分が起こしたことも,起こされたことも他人が起こしたのを見たことも。
(1) 雪彦山で落石を起こした。持っていたホールドが取れた。ビレイヤーをかすめるように,こぶし位の岩が落下したこと。けが人なし。
(2) 長屋坂でmorisamaを登っているときに,3センチ四方くらいのホールドが欠けて下に落ちた。けが人なし。
(3) 花子岩「まだまだ」を登っているクライマーが頻繁に落石を落とす様子を目撃。
(4) 堡塁岩 ソロクライマーが落石に巻き込まれ,指を切断する大怪我。救助に当たった。
(5) 堡塁岩 誰も登っていないエリア東壁で珍しく登るクライマーがいた。しばらくして東壁付近で大きな落石音。けが人なし。
(6) 六甲山キャッスルウォールで人の頭よりやや大きい岩が十数メートルの高さから落ちてきた。一般登山客がふざけて落とした,非常に悪質なケース。キャッスルウォールには10人以上クライマーがいた。奇跡的にけが人なし。
(7) スイスマッターホルンで上部から大きな落石。数十メートル上を登攀中のガイドグループが落とした。けが人なし。
*落石は人為的なケースがほとんど。上部に人がいるエリアでは特に要注意。
⑤ 滑落
(1) 1月の富士でアイゼンが外れ滑落。ろっ骨を折る重傷。自力下山。
(2) 残雪期の立山でパートナーが滑落。奇跡的に無傷。
(3) 残雪期の奥穂で滑落者2名を目撃。奥穂山荘上部。
(4) 唐沢から奥穂に上がる斜面で滑落者を目撃。
(5) 御在所岳中尾根近辺で滑落者ありとの知らせが入る。そのとき近くで登っていた。仲間が救助するも間に合わなかった。
(6) ボルダリングのフォールで頭を打ち付け出血。
⑥ 落雷
(1) 夏の剣岳でチンネ左稜線を目指しているときに急きょ天候が悪化。酷い落雷に遭い,命からがら山小屋に引き返した。この日,落雷を受けて重症者が出ていたとのこと。
(2) 六甲山のピラーロック付近で晴れの天気が一変。強烈な雨と雷に見舞われ,1時間ツェルトで避難。
山に登ったり,クライミングをすると事故に遭うのは仕方がない,自己責任であるというのは分かっています。しかし,防げる事故がもっとあったのではと,改めて自戒の念を持っています。
話は変わりますが,色々思うところがあり,近々ブログのタイトルを変更しようと思っています。
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